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2019年6月24日

糖尿病と口腔疾患(その1)

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Ⅰ はじめに
  
糖尿病患者に特有の口腔症状はあるのでしょうか。糖尿病に関連する口腔疾患で特徴的なのは、「口のかわき」、「口臭」と「感染」といえます。
 「口のかわき」すなわち「口渇」は糖尿病の随伴症状として有名ですが、臨床の場では「渇き」と「乾き」が混同されています。「口臭」は一般的には歯周病に起因するものがほとんどですが、糖尿病では歯周病が重症化しやすいことに加えて糖尿病に特有な口臭があります。また重症歯性感染症の契機としての基礎疾患として糖尿病は重視されています。

Ⅱ 口渇と口腔乾燥
 
唾液には抗菌作用、粘膜保護作用、pH緩衝作用、歯の再石灰化、消化作用、自浄作用などがあります。唾液分泌量が減少した状態を口腔乾燥症といい、一般にはシェーグレン症候群という口腔乾燥疾患の診断基準である10ml/10分が目安とされています。
 一般に唾液分泌低下・口腔乾燥を引き起こす原因には、薬剤性、全身的な原因、唾液腺自体の障害、神経性、その他(原因不明)などがあげられます。その中でも薬剤性による唾液分泌低下が占める割合が高く、糖尿病でも関連が深いとされています。例えば糖尿病によく合併する高血圧治療に用いる降圧薬や利尿薬などが口腔乾燥を引き起こす薬剤として有名です。唾液分泌低下は唾液腺が直接障害されることで生じます。この場合の訴えは、クラッカーサインとも呼ばれ、クラッカーなどの乾燥した食物を疼痛のために食べることができなくなる状態で、「食事の際には水を含まないと嚥下できない」などという訴えをします。この様な場合の唾液分泌量は1ml/10分にも満たない場合もあります。
 糖尿病患者の多くの人が口渇や口腔乾燥感を訴えますが、唾液流出が明らかに十分あるのに「口がかわく」と訴える人が少なくありません。一体どのようになっているのでしょうか。
 運動などで脱水になり「喉がかわく」という場合には、「乾き」と「渇き」を区別することは困難です。「渇き」は水を欲するthirstで、「乾き」はdrynessであり、その意味するところは異なります。つまり、「口がかわく」という表現の中には、唾液の分泌低下によって口腔・咽頭粘膜の潤滑性が低下した結果生じる、乾燥した感覚である「乾き」を意味する「乾燥感」がある一方、高血糖→浸透圧利尿→多尿となる結果、細胞内脱水が起こるために、大脳の視床下部にある口渇中枢の神経細胞が興奮して水を積極的に飲みたいという感覚が生じる「渇き」が起こります。これが生理的現象の「口渇」です。口渇は体重の2%相当の水分が失われると起こり、6%以上になると、耐えられないほど喉が渇きます。このために多飲が生じます。
 糖尿病で唾液分泌機能が低下しているのかについては、唾液分泌が低下しているという報告や、唾液腺障害が認められたという報告、さらには唾液腺機能の低下が認められたという報告もありますが、これらの原因は不明で、糖尿病患者では高血糖の存在や内服する薬剤性の唾液腺分泌低下も考える必要があります。

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