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2016年5月9日

糖尿病と虚血性心疾患(その1)

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Ⅰ 虚血性心疾患とは何か
 
 心臓は全身に血液を送るポンプの役目をする臓器ですが、当然のことながら、心臓自身の筋肉(心筋)にも血液を送る必要があります。このために心臓を取り巻くように分布している血管のことを冠状動脈といいます。この冠状動脈の動脈硬化が進行すると同時に、冠状動脈の攣縮(血管が痙攣を起こして収縮してしまい、血管内腔が狭くなること)が起こると、心筋への血液の供給が不足し、心筋が虚血状態となり発作を起こすようになります。このような状態にある心臓病を虚血性心疾患といいます。血管が細くなってある程度血液の流れが低下しても、普段の生活の活動性の範囲内では必要な血液量が供給されていれば、日常生活には何ら支障をきたしません。しかし、食事や運動などにより、心臓がより多くの血液を要求した場合、細い血管では必要十分な血液を供給することができなくなり、狭心痛という危険信号を発します。喫煙、急激な温度の変化、感情の興奮などがあると血管が攣縮して発作が誘発されます。
 
Ⅱ 狭心症と心筋梗塞

 狭心症は、冠状動脈の狭窄が軽いために、運動を中止して心臓の負担を軽くしたり、ニトログリセリンなどの冠動脈を拡張する作用のある薬を内服して血管を拡張させて心筋の虚血状態を改善してやると、発作は収まり、心臓も元通りに働きます。心筋の障害はほとんどありません。
 しかし、心筋梗塞は冠動脈が完全に閉塞してしまうために、それから先の心筋組織には血液が供給されなくなります。このため、血液が供給されなくなった心筋が虚血により壊死に陥っていて、胸痛発作が治まっても、心臓は元通りには動けません。胸痛の程度や持続時間も一般的には狭心症より強く、持続時間も長く、心不全の原因になるし、致命率も高くなります。
 狭心症も心筋梗塞も原因は同じで、症状も似ていますが、終末像は全く異なります。狭心症を繰り返していて心筋梗塞を発症することもあるし、初めての発作が心筋梗塞であることも少なくありません。糖尿病患者の場合、、危険信号である胸痛発作がなかったり(無痛性発作とか無症候性発作といいます)、突然死をしてしまうなど、非典型的な発作が多いとされています。

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