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2019年8月26日

糖尿病と認知症(その3)

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Ⅳ 高齢糖尿病患者での認知機能低下のメカニズム
  
なぜ、高齢糖尿病患者の認知機能が低下するのでしょうか。
 日本人の65才以上の高齢糖尿病患者約1000名(平均年齢は約72才)を対象にした大規模臨床介入試験J-EDIT(Japanese Elderly Diabetes Intervention Trial)が行われました。糖尿病、脂質、高血圧などをガイドライン通りにきちんと管理した強化治療群と、HbA1c平均8%程度でコントロール不良の人にそれまでの治療を続けてもらう通常治療群とに分けて観察しました。この試験に登録して貰うときに認知機能を評価するテストとしてMMSE(Minimenntal state examination)を実施しました。このテストで約40%の人は30点満点を取りました。23点以下で認知症を濃厚に疑われる人は約6.5%でしたので、通常の高齢者糖尿病患者よりも比較的点数の高い集団ともいえる結果でした。
 MMSEテストの結果が23点以下で認知症が非常に濃厚に疑われる人はどのような要素が影響しているのかを解析してみました。その結果、脳血管障害の既往があると認知症の危険が三倍以上jになることが判りました。認知症の最も頻度の高い原因疾患はアルツハイマー型認知症ですが、次ぎに多いのが脳血管性認知症です。この結果は脳血管障害のリスクの高い糖尿病患者では認知機能が低下するリスクも高いといえます。
 糖尿病だと血管障害が多いのでアルツハイマー型認知症の発症が多そうに思えますが、本当でしょうか。糖尿病患者の大脳の病理解剖所見では、糖尿病だからといって老人斑、神経原繊維変化などのアルツハイマー病の脳に特有な病理所見が増加していたということはありませんでした。しかし、J-EDIT試験に参加した患者100名に行われた脳MRI検査の結果によると、頭頂葉、視床、脳室周囲の白質病変があると認知機能が低下しているらしいことが判りました。また、 これまで無症候性と思われてきた小梗塞が多いと認知症の発症が多いことを明らかにした研究結果も報告されています。

Ⅴ インスリンと認知機能
 
1996年にオランダの研究者らが、インスリン治療中の糖尿病患者はアルツハイマー病のリスクが高いことを最初に報告しました。この後、同様の成績が続けて報告されはじめ、高インスリン血症、もしくはインスリン抵抗性が認知機能低下と関連しているように思われます。高齢糖尿病患者での検討で、インスリン抵抗性の程度とMMSEスコアにきれいな相関関係が認められたという報告もあります。なぜ、高インスリン血症あるいはインスリン抵抗性があると認知機能が低下するのかというメカニズムに関しては、多くの仮説が唱えられていますが、未だ明らかではありません。

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