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2021年12月27日

肥満とメンタルケア(その2)

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Ⅱ 治療に難渋する肥満症患者でのメンタルケア
 
治療に難渋するというのは治療者側からの視点で、患者側からすれば、「話を聞いてくれない」、「いつも同じことばかり言う」、「栄養士さん任せ」といった治療者に対する不満や不信感が隠れている場合があります。

①治療動機が乏しい肥満患者の場合
 
治療動機が乏しい患者は,医師や栄養士がいくら減量の必要性を説いても、その言葉は耳の中を右から左に通り抜けてしまい、いつまで経っても実践に結びつくことはありません。「今困っていない」、「減量は無理」、「運動は苦手」などの言い訳をして、減量のメリットを十分に理解していません。この様な場合は、患者が治療に前向きになれない理由を、日常生活の中から探し出す必要があります。「変わりたいけど変わりたくない」という患者の矛盾を解消する方向に行動を変えていくようにする技法に「動機付け面接」というのがあります。これは以前よりアルコール依存や薬物依存の治療で用いられてきたものですが、肥満治療にも有効なことが明らかになってきました。

②言い訳が多い肥満患者の場合
 
「お土産を貰って誰も食べなかったので、自分は食べたくなかったが一人で食べた」、「職場のおやつタイムで自分だけ食べないわけにはいかない」、「小食なのに体重が減らない」などの言い訳の多い患者では、患者が実行可能なレベルまで要求レベル落として、自発的な行動がとれるように指導していくことが有効だとされています。

③解決が直ぐには困難な心理社会的問題を抱えている肥満患者の場合
 
直ぐに解決するのが困難で複雑な心理社会的問題を抱えている場合は、それが食行動に影響している可能性が高く,生活の質の低下をもたらしていることがよくあります。患者自身がその関連性に気付いていない場合もあります。この様な場合は、ストレスがホルモン、血糖、血液生化学に与える影響について明らかにすることで、ストレスとなる心理社会的問題と食生活との関連を理解することが大切です。心理社会的問題は多岐にわたりますが、多くは家庭内(親子、配偶者、嫁舅姑、介護)または職場、学校での人間関係です。

④リバウンドを繰り返す肥満患者の場合
 
外科治療を除く肥満治療は、短期的にはよい成績でも、3~5年の間にはほとんどが再増加しもとの体重に戻ります。すなわちリバウンドするといわれています。したがって、リバウンドを繰り返していたとしても、それを否定的に評価するのは早計です。リバウンドを最小限にするにはどうしたらよいかを医師と患者が一緒に考えるべきなのです。

⑤高度肥満症の場合
 
高度肥満症患者(BMI≧35Kg/m2)はしばしば重大な心理社会的問題を抱え、精神疾患を合併している者も少なくありません。成人以前発症の高度肥満症では、周囲の偏見や差別に心を傷付けられ過度に防衛的になり、自己評価が低下しているケースが多く見受けられます。また高度肥満症であるが故に、少し位の減量では満足しない傾向もあります。この様な場合は,減量に立ち向かおうとする気持ちを尊重しながら、実行できたことを評価し、心理社会的問題についても介入していくことが大切です。

⑥うつ病を合併した肥満症患者の場合

 肥満症患者にうつ病の頻度が高いこと、またうつ病患者に肥満がしばしばみられることはよく知られています。肥満にうつ病を併発した場合は、うつ病治療が優先されます。うつ病を伴う肥満症患者に通常の食事療法を行っても、却ってダイエットがストレスとなり、うつ病が悪化する恐れがあるからです。抗うつ薬には、体重増加をきたす者もありますので注意が必要です。

⑦むちゃ食い障害
 
むちゃ食い障害は制御できない過食(むちゃ食い)を繰り返すという特徴があります。この障害は高度肥満者で最もありふれた摂食障害です。むちゃ食いを伴った肥満に対しては認知行動療法が唯一エビデンスを伴った治療法といえます。

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