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2021年9月21日

肥満症の運動療法ー成功のコツ(その1)

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Ⅰ  運動療法の理論

1) 減量、代謝指標の改善と運動
 
肥満に特有な合併症の改善は、減量方法の如何に関わらず、体重や内臓脂肪の減少に比例します。5~10%の減量のもたらす効果は、食事や運動の介入方法で明らかな差はみられず、同じエネルギー量を食事で制限した場合と運動で消費した場合で、内臓脂肪の減少の程度に差はありません。また、内臓脂肪の減少率が同じならば、代謝指標の改善効果も差がありません。
 特定保健指導の成績によると、4~5%の減量でも合併症の改善に有効とされ、3Kgの減量、3cmの腹囲減少によるメタボリックシンドロームの減少は、それぞれ76.8%、73.0%でした。
 米国心臓協会,米国心臓学会、米国肥満学会の最新の肥満治療指針によると、3~5%の減量で心血管危険因子の一部は臨床的に意味のある改善をみせますが、より大きな減量はさらに効果が大きいため、6ヶ月で5~10%の減量を推奨しています。
 また、日本肥満学会の肥満症治療ガイドラインはBMI30未満で5%、BMI30以上で5~10%の減量を指示しています。しかし、低エネルギー食の減量効果は、上記の指針によれば6ヶ月で4~12Kg(4~13%)減と最大になりますが、その後はリバウンドし、1年で4~10Kg(4~10%)、2年で3~4Kg(3~4 %)減にとどまります。食事療法による減量維持の困難さが示唆されています。

2)エネルギー・バランスからみたリバウンド、減量体重の維持
 
エネルギー・バランスが保たれていて,体重が維持された状態にある集団で、二重標識水法(水素と酸素の安定同位元素で標識した水を用いてエネルギー消費量を正確に求めることができる方法)により、総エネルギー消費量と体重の関係を求めた研究によると、10%のエネルギー消費量(=エネルギー摂取量)の減少に対応する体重の減少は7.1%でした。
 肥満者の体重減少1gに相当するエネルギーコストは7kaclなので、たとえば現在より100 kca少ないエネルギー摂取を続けると、当初は1日あたり100÷7≒14gのペースで体重が減少します。しかし、体重減少によりエネルギー消費量も減少するので、同じエネルギー摂取量を続けてもエネルギー・バランスのずれは次第に小さくなり、体重減少のペースも鈍くなります。エネルギー消費量と体重に関する前述の関係を用いると、体重76.6Kg、エネルギー消費量2662kcalのヒト(前述の研究に参加したヒトの平均値)が100kcal少ないエネルギー摂取量を継続した場合、最終的には体重が約2Kg減少したところでエネルギー・バランスが平衡に達し、以後はそのエネルギー摂取量を続けることで2Kgの減量が維持されました。すなわち、1Kgの体重差に相当するエネルギー消費量の差は約50kcalといえます。
 食事療法で6ヶ月後には比較的大きな減量が達成されたにもかかわらず、その後リバウンドして2年後には3~4Kg減になるということは、せいぜい150~200kcalのエネルギー制限しか長期には維持できないことを意味します。食事制限の緩みで生じるこの体重リバウンドは、体重増加によってエネルギー・バランスの調整をしている機序ととみることもできます。運動でこのリバウンドを防ぐには、体重1Kg当たり50kcal(週350kcal)の運動量が必要となります。
 

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