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2022年6月20日

脂肪肝を防ぐ食事療法(その1)

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Ⅰ はじめに
 
わが国では、長年にわたりB型慢性肝炎やC型慢性肝炎、そして過量飲酒が慢性肝疾患、肝硬変、肝細胞癌の原因として重要視されてきていました。しかし、2001~2010年における新規発症肝細胞癌例を検討したところ、過量飲酒も肝炎ウイルスに持続感染もない肝細胞癌の症例数がこの10年間に倍増し、アルコール性肝障害やB型慢性肝炎を基盤とする肝細胞癌の症例数と肩を並べるまで倍増したことが明らかになりました。糖尿病と関連の深い非アルコール性脂肪肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)が重要視される契機となりました。

Ⅱ 脂肪肝とは
 
脂肪肝は肝細胞の細胞質に、細胞膜で覆われた中性脂肪を主成分とする脂肪滴が沈着することで生じます。この脂肪滴の大きさや肝細胞内での分布は異なります。例えば、肥満などの過栄養や飢餓などの低栄養で生じる脂肪肝は、中型~大型の脂肪滴が肝細胞の中心にある静脈領域を中心に分布しますが、ミトコンドリアの機能不全時に惹起される脂肪肝では、微細な脂肪滴が肝細胞にびまん性に広く分布するのが特徴です。
 正常な肝細胞では毎食後に合成される脂肪酸の大半が超低比重リポ蛋白(VLDL)として分泌され、肝臓に残った脂肪酸も夜間にケトン体産生の原料として消費されるので、肝臓に存在する脂肪の半減期は24時間以内で、常に活発な脂肪酸やコレステロールの生成・流入と消費・放出が繰り返されています。これに対して、脂肪肝では脂肪滴が肝細胞に恒常的に沈着していて代謝が活発でなく,静的な印象です。実際、NAFLD症例の肝細胞に沈着した脂肪滴の半減期は4~12日と正常肝に比べて長いことが知られています。

Ⅲ 生活習慣が誘発する脂肪肝
 
生活習慣病は生活習慣が発症・進展に関与する疾患群の総称で、高血圧や脂質異常症、糖尿病などにとどまらず,精神的ストレスや喫煙、過量飲酒によりもたらされる疾患も含まれます。
 過量飲酒が脂肪肝をもたらすメカニズムはよく知られています。過量飲酒によりエタノール分解に必要な補酵素NADPHを供給する代謝経路が活性化されます。この結果生じた過剰のNADPHは食事で摂取された炭水化物を効率よく脂肪酸に変換するので、連日飲酒を続ければ健常者でも容易に脂肪肝になります。過量飲酒者ではしばしば肝臓の線維化を生じて肝硬変や肝細胞癌になることも希ではありませんが、脂肪肝はその初期変化とされています。
 肥満者でもBMIの上昇と共に脂肪肝を合併する頻度が増加することが知られています。肥満者では食後の高インスリン血症が肝細胞内での糖質からの脂肪酸合成を亢進させると共に、肝細胞からの脂肪分解を抑制するためです。

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