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2019年4月15日

運動療法を始める前に(その1)

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Ⅰ はじめに
 
 2008年4月からの特定健診・保健指導などでメタボリックシンドロームがマスコミなどで大きく取り上げられるなか、職場での減量競争中の中年男性が、真夏の朝にジョギングに出かけたまま死亡されているところを発見された伊勢市の出来事(そのときの歩数計は3,500歩を示していたといいます。死因は虚血性心不全と推定されています)を皆さんもよく覚えていることと思います。運動療法は糖尿病や心臓血管合併症を予防できる反面、やり方を間違えると思わぬ重大な事故を引き起こします。これからも、適切な指導を受けずに安易に運動療法を行う人が増えてくると、この様な痛ましい事故が増えるのではないかと危惧されます。
 運動療法を行うときには、運動の利益がリスクを上回ることが大前提です。糖尿病では特にその閾値が低いので、運動に潜在するリスクを認識して、その悪影響を最小限にするように細心の注意を払うことが大切です。日常の生活運動、散歩などの運動強度を超える運動を開始する際には、まずメディカルテェックを受けて、その結果から各自にあった運動の強度、時間、種類などを決める必要があります。

Ⅱ メディカルテェック
 
 運動時の障害で最も重要なのは運動中の突然死です。30歳以上の健康な人の調査では、突然死の原因は90%以上が虚血性心疾患によるものだといいます。この虚血性心疾患の発症頻度は、糖尿病でないヒトでは1.6人/千人・年(福岡県久山町の疫学調査)であるの対し、糖尿病患者は8.8人/千人・年と5倍だといいます(日本糖尿病学会の調査)。この数字は毎月50人の糖尿病患者がいると2年間に1人が突然死の危険があるということなのです。
 ちなみに糖尿病の心臓血管障害に対する危険度は、一度心筋梗塞を発症した人が、その後に心筋梗塞を再発する危険性と同じだということです。また、肥満、高血圧、高脂血症、喫煙など心臓血管障害の危険因子を複数合併している場合は、糖尿病が軽いといっても油断はできません。HbA1cが6.5%以下や境界型糖尿病の段階でも脳・心臓血管障害を発症する危険性があるのです。さらに、糖尿病では無症候性虚血性心疾患のリスクも高く、自覚症状からその存在を検索することは難しいことが多いのです。
 そこで、アメリカ糖尿病学会は運動療法を安全に始めるための指針を発表しました。それによると、以下の条件を満たす人は専門医によるメディカルテェックが必要だというのです。
 
1 糖尿病以外の心血管障害の危険因子の有無にかかわらず40歳以上の患者

2 30歳以上で糖尿病の罹病期間10年以上の1型または2型糖尿病患者
    高血圧症、喫煙、脂質異常症の合併
    増殖性または前増殖性網膜症の合併
    早期腎症を含むと運病病勢腎症の合併

3年齢にかかわらず以下の疾患を合併する患者  
   心血管障害、脳血管障害、末梢血管障害が存在または存在を疑う場合
   自律神経障害を合併
   糖尿病性腎症による腎不全など進行した腎症を合併している場合
 
これらの条件は糖尿病であれば誰にでも当てはまってしまうともいえ、いちいちメディカルテェックを受けなければ運動ができないとすると、面倒くさい話になるし現実的ではありません。そこで、次にあげるチェックポイントを確認することで、安全に運動療法を行うように心がけて下さい。

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